ブロッコリーに薬膳のイメージはあまりないですが、「ごはんがおくすり」であるということと考えると、すべての食事は健やかなカラダをつくる薬膳です。
せっかく食べるのであれば、おいしく、最大限の栄養効果が得られるようにしたいものですね。
中医学から見るブロッコリー
今回ご紹介するブロッコリーの発祥は、ローマ時代のイタリア。
食用として品種改良されたキャベツやカリフラワーの仲間で、日本には明治時代初期に入ってきたといわれています。
食卓でよく見られるようになったのは 1970年代以降。
近年ではハンバーグやステーキに添えられていたり、お弁当のつけあわせとして彩りを鮮やかにしたりと、目にしない日はないと言っても過言ではないかもしれません。
中医学で見るブロッコリーは、五性は「平」、薬味は「甘」です。
五性の「平」とは、熱を取り除き、内部を温める2つの作用をより穏やかに行い、すべての病証をカバーします 。
薬味の「甘」には、補う、解毒する、緊張緩和・滋養強壮作用があり、まずは 脾に入るとされています。
この「脾」とは胃とともに消化吸収に関する働きを担っています。
ブロッコリーは、『気滞』・『気虚』という気の滞りや不足をしている体質におすすめです 。
性味 | 平、甘味 |
帰経 | 肝、脾、大腸 |
中医学的効能 | 利五臓、利関節、通経絡 |
わたしのタイプはどっち?気滞・気虚チェック
まずは自身の体質を見極めることが、薬膳を活用して元気をつくることにつながります。
該当する項目が多いほうが現在のタイプです。
気滞タイプ □ イライラする □ 不眠・不安 □ 片頭痛 □ 目が赤い・眼痛 □ 喉が詰まるような不快感 □ お腹が張る □ 繰り返す下痢と便秘 |
気虚タイプ □ 少し太り気味 □ むくみやすい □ 立っているのがつらい □ 声が細い □ 汗をかきやすい □ 息切れ □ 冷え性 |
気の巡りが悪い状態の「気滞タイプ」
なんだか最近憂鬱…。食べた後に胃が重たく感じる…。
こんな症状がある場合は、もしかしたら「気滞」かもしれません。
気滞とは、気の流れが悪くなることで不調が生じます。
主な原因としては、やはりストレス。
長期に放っておくと慢性化して気滞体質に陥ります。
喉が詰まるような不快感やお腹や胸が張るといった症状のほか、眠れない、イライラしやすくなるといった精神的な不調が現れやすくなります。
このタイプは、強い甘味や鹸味(しょっぱい)のある濃い味は控えめにし、唐辛子・ニンニク・さつまいも・豆類・ネギはなるべく避けます。
また、イライラや頭痛があるときは辛味・熱性のものは控えると良いです。ガスやゲップが多い場合にはいも類・豆類を控えたほうが良いです。
気の巡りを良くするには、第一にゆっくり休養をとってストレスを上手に発散することですが、仕事や環境からなかなか解消が難しい場合は、ブロッコリーをはじめとした食材に加え、薬味や ハーブ・スパイスで気の流れを促す効果を得るようにしましょう。
気が不足している状態の「気虚タイプ」
最近疲れやすくてすぐに座りたくなる…。汗をかきやすい…。
こんな症状がある場合は「気虚」かもしれません。
気虚とは、活動のエネルギー源である気の量が不足することで不調を生じます。
主な原因としては、消化吸収機能の低下です。
血虚といわれる血の不足も伴うと不健康に痩せる症状も見られます。
気は、食べ物が胃腸で消化吸収されてつくられますが、気虚体質になると胃腸が弱く、消化吸収がうまくいかず気がつくれません。
その結果、免疫力が低下し、風邪などのウイルスやアレルギーに対する抵抗力も落ちてしまいます。
このタイプは、冷たいものや生もの、脂っぽいものや甘いものの摂り過ぎに注意し、唐辛子やワサビなどの刺激の強い香辛料は避けます 。
また、チョコレート・小麦粉・白砂糖・海藻・生野菜などの胃腸を冷やす食品はなるべく控えたほうが良いです。
胃腸の消化吸収機能が低いことから、暴飲暴食は禁物です。
野菜であれば蒸す・煮るなどで冷やさない工夫をするとともに、温かく消化に良いものを選んで食べるようにしましょう。
栄養をしっかり摂るコツは火の通し方
気滞・気虚の体質の方は積極的に摂りたいブロッコリー。
調理をする際には茹でるということが多いかもしれません。
ブロッコリーは煮ても栄養価が比較的流出しにくい野菜ですが、それでも余すことなく栄養を摂り入れるためには「蒸す」がおすすめです。
蒸し器なんて持っていない!という方は多いと思います。
「蒸す」をおすすめしている私も実は持っていません。
蒸し器があるのであれば、ぜひ蒸し器を活用していただきたいですが、持っていない場合にはフライパンと蓋で簡単にできる「茹で蒸し」をしてください。
まず、フライパンの底に行きわたる程度にお水を入れ、塩小さじ1を加えます。
強火で加熱し、茎から先に入れ、沸騰したら房の部分を重ならないように入れ、蓋をして2分加熱を続けます。
食材の歯応えを残すのであればこのまま水を切ればできあがりですが、柔らかく仕上げるには火を止めて蓋をしたまま2分ほど待ちましょう。
せっかく流出を抑えた栄養を流してしまわないように、いずれの場合にもお湯から引き上げた後に水にさらさないことがコツです。
ブロッコリーの優れた栄養は茎にあり!
栄養をしっかり残した状態で準備ができたブロッコリーは、もちろんそのまま温かいうちに食べるのも良いですが、より吸収を高めるために相性の良い食材と一緒に食べるのもおすすめです。
ブロッコリーは花蕾(からい)という花のつぼみのかたまり部分と茎に大きく分かれます。
βカロチンやビタミン B1・B2、ビタミンC、カリウムなどが豊富で、新陳代謝を高め、免疫力をアップする効能があります。
さらにアンチエイジング効果もあるということを聞けば、一層積極的に摂り入れたくなりますね。
なかでもビタミンCは茎の部分に多く含まれていますので、捨ててしまうのはもったいないです。
繊維が多いので厚めに皮を剥いて、輪切り、短冊切りなど好みの大きさにカットします。ホクホクと甘い茎はお肉と炒めたり、オムレツなどの具材としても大活躍です。
また、最近では植物由来の有用成分ファイトケミカルを少量で有効に摂取できるスプラウト (発 芽・新芽) も注目されています。
スープに少し浮かべるだけで、いつものスープに特別を演出してくれます。
気を正すおうちで簡単薬膳レシピ
ブロッコリーの茎と牛肉炒め
牛肉に含まれる必須アミノ酸のひとつ「トリプトファン」はセロトニン生成を促し、心のバランスを保つ作用でストレスや不安を解消。
気の巡りをスムーズにさせます。
材料:2人分
牛肉 (薄切り) 200g
ブロッコリーの茎 一房分
ネギ 1/2本
★醤油 大さじ 1
★酢 大さじ 1/2
★みりん 大さじ 1
★コショウ 適宜
★片栗粉 大さじ 1/2
ごま油
作り方:
1 牛肉は食べやすい大きさにカットし、★を混ぜたものに漬け込む。
2 その間にブロッコリーの茎の皮を剥き、食べやすく斜め薄切りにし、平皿に少量の水を加え電子レンジで 1 分間温める。
3 ネギは斜め薄切りにカットする。
4 フライパンにごま油を加え、1を漬け汁ごと炒める。
5 赤みが少し残る程度に火が通ったらブロッコリーの茎とネギを加え、全体に火を通したらできあがり。
ブロッコリーとサーモンのサラダ
鮭には血液の健康に寄与する栄養成分 DHA や EPA が豊富に含まれています。
気を補い、血の巡りをスムーズにすることから冷えやむくみ、めまいなどにも有用です。
材料:2人分
スモークサーモン 150g
ブロッコリー 1/2 房
玉ねぎ 1/4 個
★マヨネーズ
★粒マスタード
★塩 適宜
★こしょう 適宜
作り方:
1 ブロッコリーは食べやすい大きさにカットし、茹で蒸しをする。
2 サーモンは 3cm 程度に切り、玉ねぎは薄くスライスし水にさらしておく。
3 ボールに★を混ぜ合わせ、ブロッコリー、サーモン、水を切った玉ねぎを加える。
4 よく混ぜ合わせたらできあがり。
ブロッコリーのぽかぽかスープ
辛味(しんみ)の特性をもつ生姜は胃腸をしっかり内側から温め、寒さを散らす作用で冷えを解消します。
気・血双方の作用によりカラダ全体の巡りを整えます。
材料:2人分
ブロッコリー 1/2 房
生姜スライス 6~8 枚
フライドオニオン 大さじ 1
★コンソメ 1個
★水 300cc
作り方:
1 ブロッコリーは一口程度にカットする。
2 生姜を薄くスライスしたものを電子レンジで 1 分温める。
3 鍋に★と生姜スライスを入れ中火で加熱し、沸騰したらブロッコリーを加える。
4 ブロッコリーに火が通ったらフライドオニオンを加え、火を止めできあがり。