中医学から見るネギ
生薬では葱白(そうはく)と呼ばれ、発祥は中国西部といわれています。
日本へは千年以上も前に朝鮮半島を通って食用・薬用の食材として渡ってきました。独特な香りをもつことから魔除けとしても重用されたネギは、「日本書紀」や「万葉集」にも登場する古くからなじみのある食材です。
よく耳にするのは、ネギは風邪の初期症状に良いとされ食用として摂るだけでなく、首に巻くなどのおばあちゃんの知恵袋的な療法も存在します。これはネギの揮発成分が鼻詰まりを解消することに基づいています。
中医学で見るネギは、五性は「温」。薬味は「辛」です。
五性の「温」とは、体内を温め、寒邪を追い出し、陽を強める働きがあります。薬味の「辛」には、滞っているものを発散させ、気血の流れを良くします。
ネギは、『気滞』・『瘀血(おけつ)』という気血の滞りにより生じる不調におすすめです。
性味 | 温、辛 |
帰経 | 肺、胃 |
中医学的効能 | 散寒解表、通陽散寒、解毒 |
瘀血って何? なぜ瘀血になるの?
瘀血はひとことで言えば「血液ドロドロ」の状態のことです。
血液が汚れ、粘度が高まって流れが悪くなってしまっていることから起こります。
主な原因としては、偏った食生活や揚げ物・脂身のついたお肉などの脂質の多い食事、また、運動不足や不規則な生活などがあげられます。ストレスなども原因になり、血液の貯蔵や循環を担う肝臓の働きが鈍くなることで生じます。
瘀血の症状は?
瘀血チェック
□ 顔色や唇、歯茎の色が暗い
□ シミやそばかすが増えた
□ 肩こり・頭痛
□ 物忘れが多くなった
□ 生理不順
□ アザができやすい
□ 肌に艶がない
瘀血になると、血の巡りが悪くなることで本来全身に運ばれるはずの酸素が不足し酸欠状態になります。そのため、栄養が行き届かなくなることで新陳代謝の低下も生じます。カラダ全体の不調につながり、思考力や集中力の低下をはじめ、慢性的な肩こりや頭痛といった不調を引き起こします。
瘀血が悪化すると、ドロドロとした状態の血液で血の巡りが塞がることで、高血圧や高脂血症、さらには狭心症や脳梗塞などの重い循環器疾患を招く心配もあるため、早めに血の巡りをスムーズにすることが大切です。
瘀血を改善するには?
女性は特に生理や閉経、妊娠・出産と血に関係することが多く、瘀血に陥りやすいです。
第一にカラダを冷やさないことを心がけて、冷たい食べ物や飲み物の摂取や薄着をしないようにし、お風呂にしっかり浸かるなどすると良いです。
また、血の滞りの起因は運動不足によるものも大きいです。
エスカレーターは使わず階段を利用する、買い物はひとつ先のスーパーに行く、休日に散歩を習慣にするなど、ジム通いやジョギングなど本格的な運動が難しい場合には、日常の行動で少し気にかけるようにするだけでも違います。
食事では「甘味」のものや、肉の脂身やバター・生クリームなどの動物性脂肪を避けましょう。
薄味を心がけて、カラダを冷やす苦瓜や筍、柿、コーヒーなどは控えると良いです。
瘀血を解消するには生食がおすすめ
薬味としても大活躍のネギは、独特の強い辛みや香りが苦手という方も多いですが、瘀血解消には生食がおすすめです。
この辛みや香りの成分である「アリシン」は、カラダを温め、血液サラサラ効果が得られるため、瘀血解消に大きく貢献します。ただ、アリシンは熱に弱く、また、空気にさらされることでも栄養が逃げてしまうので、なるべく食べる直前の調理がおすすめです。
水にさらす際には2~3分程度にすると流出を防ぎます。
また、アリシンには高い高酸化の働きによる免疫力強化とともに強い殺菌力。そして、現代人に不足しがちなビタミンB1の吸収力を高める働きのおかげで疲労回復や体力強化にも期待できます。
どうしても辛みが苦手で生食は無理…という場合には、オイルに漬けてネギ油として使用したり、スープにするなどして栄養が溶け込んだ状態を余すことなく摂ると良いでしょう。
ネギは丸ごと楽しむが鉄則!
ネギの白い部分と青い部分にはそれぞれに豊富な栄養が含まれています。
共通して豊富なのはビタミンCです。ビタミンCは美肌づくりに欠かせない成分ですが、血流を正すうえで欠かせない血管を健やかに保つ働きがあります。強い抗酸化力によりカラダ全体のアンチエイジングに寄与します。
白い部分に含まれる成分
白い部分は淡色野菜に分類され、前述したアリシンやビタミンCが豊富です。
ビタミンCはシミやそばかすを防ぎ、疲弊した肝臓の働きを回復させます。また、強い高酸化力により脂質酸化を防ぎ血栓や動脈硬化の予防に期待できます。
青い部分に含まれる成分
青い部分は緑黄色野菜に分類され、お肌の抵抗力を高めるβ-カロテン、カルシウムやセレンなどのミネラルが豊富です。特筆すべきは「フルクタン」という成分。これは青い部分のネバっとした内側部分に含まれているもので、免疫力を高める働きがインフルエンザなどの感染症に効果があると近年注目されています。
血液サラサラおうちで簡単薬膳レシピ
ネギの旨辛漬け
シャキシャキとした歯応えを楽しむ常備菜としておすすめの一品。ご飯のお供にはもちろん、お豆腐やアリシンと相性の良い豚肉をしゃぶしゃぶ風にしたものに添えても◎。
材料:2人分
長ネギ 1本
★しょうゆ 大さじ2
★みりん 大さじ2
★酒 (無ければ水でも可) 大さじ2
★酢 小さじ1
★ごま油 小さじ1
★豆板醤 小さじ1
★かつおぶし 15g
作り方:
① 長ネギを斜め薄切りにする。
② ★を鍋でひと煮立ちさせる。
③ タッパに①を入れ、粗熱をとった②を加える。
④ 全体が浸るように半日程度漬け込んだらできあがり。
ネギと生姜の味噌スープ
喉が痛い、寒気がするなどの風邪かな?というときにおすすめスープ。抗菌・抗ウィルス作用のある成分ネギオールをたっぷり摂って、カラダの芯からポカポカ&免疫力アップ!
材料:2人分
ネギ 1/2本 (青い部分含む)
生姜 1片
卵 1個
味噌 大さじ2
★顆粒かつおだし 小さじ1
★水 400cc
作り方:
① ネギは小口切りにし、生姜はすりおろす。
② 鍋に★を入れ、沸騰してきたらネギを加える。
③ ②のお湯を少量小皿に取り、味噌を溶いておく。
④ ②に生姜を加え、円を描くように溶き卵を入れる。
⑤ 卵がフワッと固まったら火を止めて③を溶き入れてできあがり。
ネギのすき焼き風煮
牛肉よりもネギが主役のすき焼き風煮です。ネギと相性抜群の牛肉に含まれるオレイン酸は、LDLコレステロールを減らし、血圧を下げ動脈硬化予防に最適です。
材料:2人分
ネギ 1本 (青い部分含む)
牛肉薄切り 200g
★醤油 大さじ2
★みりん 大さじ2
★砂糖 小さじ1
★出し汁 100cc
作り方:
① ネギは5センチ幅に切り、中火にかけ焼き色をつけておく。
② ネギを取り出した鍋に★を入れ、ひと煮立ちさせたら別容器に移しておく。
③ 牛肉の薄切りと①を鍋に戻し、②を加え、焼き煮をする。
④ 全体に火が通ったらできあがり。