中医学から見る人参
ニンジンの起源は中央アジアにあり、白く枝分かれした形状が特徴でした。現在のオレンジ色のニンジンは17~18世紀頃のオランダで改良されたといわれています。日本には中国を介して東洋系ニンジンが1600年代に伝来し、その後に西洋系ニンジンが江戸時代後期に長崎から入ってきました。明治以降には多くの品種が流通するようになり、現在の定番野菜の地位を築き上げました。
一般的に薬効のあるニンジンは朝鮮人参などと呼ばれ、聞いたことのある方も多いと思います。漢方でいわれるニンジンは、普段わたしたちが口にしている食用ニンジンではなく、紅参やオタネニンジンなどを指します。
ほかにも西洋人参、田七人参、シベリア人参などがあり、特に田七人参は別名「金不換」とも呼ばれ、つまり「お金に換えられない」といわれるほど貴重なものとされていました。
薬用人参がウコギ科であるのに対し、食用ニンジンはセリ科のため、ルーツも異なります。
中医学で見るニンジンは、五性は「平」。薬味は「甘」です。
五性は「平」はカラダの余分な熱を取り除き、内部を温める2つの作用を穏やかに促します。薬味の「甘」は、まず脾に入り、緊張をほぐし、滋養強壮に寄与します。
ニンジンは、血が不足し、カラダが栄養不足に陥る『血虚』におすすめの食材です。
性味 | 平、甘 |
帰経 | 脾、肺、肝 |
中医学的効能 | 浮腫解消、健眼、健胃 |
血が不足する『血虚』体質とは
カラダ全身に栄養を運ぶ血が不足している状態が「血虚」です。
血が不足すると、カラダの隅々まで栄養が行き渡らず、肌荒れや抜け毛、爪が割れたり、こむらがえりなどが生じます。メンタル面では、集中力の低下や不安感などが強く出るのも特徴です。
特に女性は月経により、男性よりも血虚になりやすい傾向があります。血虚の状態が慢性化することにより、不妊に陥りやすいので要注意です。
血が不足しやすくなる習慣として、寝不足や過労などがあり、偏食や過度のダイエットなども大きな原因となります。
血虚の主な症状
□ 目が疲れやすい
□ 抜け毛・白髪
□ 顔色が白く艶がない
□ 肌が乾燥しやすく痒みが生じる
□ 爪が白く割れやすい
□ こむらがえり
□ 手足のしびれ
まぶたがピクピク…。不快な症状は「肝」の滞りが原因
ニンジンには、血を補い、目と関係の深い肝の働きを高めるとされています。PCやスマートフォンの利用で近年は目への負担が大きくなっており、そこから生じるドライアイや視力の低下予防にも効果的です。
突然、まぶたがピクピクすることはありませんか?
中医学では「肝」が原因とされています。「肝」は気の流れをコントロールするとともに、血を貯蔵する働きも担っています。目や筋とのつながりも深いため、肝に滞りが生じると目の不快感にもつながります。
肝の滞りは、ストレスや精神的な緊張が続いたり、過労・睡眠不足などで血の消耗、気の流れが阻害されることが原因となります。考えごとや悩みごとが多いときは血を大量に消耗しますので、くよくよ考えすぎないための気分転換などをうまく採り入れると良いでしょう。
また、慢性的に胃腸の不調が続いている場合は、食物からの消化吸収が悪く、血をしっかりと補えない状態ですので胃腸も含めたケアが重要です。
血を補う食材としておすすめのニンジンに加え、胃腸も含めたケアにはヤマイモやもち米、リンゴ、ハトムギなどと一緒に摂るのがおすすめです。
避けたほうが良いものとしては、生ものや冷たいもの、脂っぽいもの、チョコレートやバナナなどの甘いものが挙げられます。また、唐辛子・ワサビ・胡椒・山椒などの刺激の強い食材も控えたほうが良いです。
プロビタミンAが目の機能を高める
本来の旬は冬ですが、一年中手に入れることができる定番野菜です。
消化吸収も促進するので、食欲不振や下痢・便秘にも有効です。咳や痰を取り除く作用にも効果があるといわれます。
栄養素として特筆すべきはβカロテン。
βカロテンは体内でビタミンAに変換されますが、このビタミンAは目の機能や皮膚・粘膜の状態を正常に維持するために必要な栄養素です
ビタミンAは脂溶性ビタミンに分類され、体外に排出されず蓄積されていきます。そのため、摂り過ぎると頭痛やめまいなどの健康障害を引き起こすことにつながり、胎児の発育に悪影響を及ぼす可能性があることから女性は特に注意が必要です。しかし、βカロテンから得られるビタミンAは、プロビタミンAと呼ばれ、体内で不足している必要量だけが変換されるため過剰摂取の心配はありません。
ちなみに耐容上限量は男女ともに2,700μgRAE、1日あたりの推奨量は年齢によって多少変動しますが男性900μgRAE、女性700μgRAEです。Mサイズのニンジンであれば1本あたり760μgRAEのビタミンAが含まれています。
さらに、抗酸化作用もあるため、動脈硬化や免疫機能、アンチエイジングにも期待できます。
吸収力を高めるためには、油との相性が良いのでオリーブオイルなどの良質の油と和えたり、加熱調理によって効果がさらに高まります。
ニンジン効果を最大限に活用して、チワワのような愛くるしく潤んだ瞳を常に保っていきましょう。
カラダ潤すおうちで簡単薬膳レシピ
ピーラーで簡単!キャロット・ラペ
りんご酢効果でニンジン特有のクセが気にならないので、苦手な方にもおすすめ!栄養を閉じ込めて丸ごと摂れるヘルシーレシピです。
材料:2人分
ニンジン 2本
★りんご酢 大さじ5
★塩 少量
★黒コショウ 少量
★ガーリックパウダー 少量
★オリーブオイル 大さじ2
作り方:
① ニンジンの皮を剥き、ピーラーで薄く削ぎ切りする。
② ★を混ぜ合わせる。
③ ★を①に少しずつ加え、全体をなじませたらできあがり。
ニンジンと春菊のごま油焼き
βカロテン豊富な春菊とのコラボはビタミンA最強レシピ!春菊独特の香りはαピネンという成分ですが、安眠を促す作用もあるので春先の不眠にも効果が期待できます。
材料:2人分
ニンジン 1/2本
春菊 100g
しらす 20g
★薄力粉 50g
★冷水 70cc
★かつおだし 小さじ1
ごま油・サラダ油 (比率1:3) 適宜
作り方:
① ニンジンは千切り、春菊は3cm程度に切る。
② ★をボウルに入れ混ぜ合わせる。(※混ぜすぎないよう注意)
③ しらすと①を②に加え、ざっくり混ぜ合わせる。
④ フライパンにひたひたになる程度の油を入れ中温に熱する。
⑤ ③を4等分にし揚げ焼きするように両面火を通したらできあがり。
ニンジンと大根のきんぴら
ご飯が進んでしまう一品ですが、大根にはご飯に含まれるでんぷんの消化吸収を助ける働きがあります。食後の血糖値上昇も緩やかにするので副菜としておすすめです。
材料:2人分
ニンジン 1/2本
大根 120g (5cm程度)
ごま油 適宜
白ごま 適宜
鷹の爪輪切り 適宜
★醤油 大さじ1/2
★みりん 大さじ1
★かつおだし 適宜
作り方:
① ニンジンは皮ごと細切り、大根は皮を剥き細切りにする。
② フライパンにごま油と鷹の爪輪切りを入れ、①を加え中火で炒める。
③ 全体的にしんなりしてきたら★を回し入れ焦げないように弱火でじっくり水分を飛ばす。
④ 白ごまを振ったらできあがり。