中医学から見る白菜
白菜の起源は地中海沿岸とされ、改良が進み発展したのは中国北部といわれています。日本に伝わったのは明治時代ですが、広く一般に普及したのは大正時代に入ってからのため比較的新しい野菜といえます。
白菜は冷と温の両方の特長があり豆腐・大根とともに「養生三宝」といわれ、古くから精進料理に欠かせない免疫力を高める食材のひとつです。煮ると体内の熱を取り除く働きがあるので風邪対策に、生食には酒毒を消す働きがあるので二日酔いなどに良いとされています。
中医学で見る白菜は、五性は「平」。薬味は「甘」です。
五性は「平」に分類されますが、体内に溜まった熱、特に胃腸の熱を取り去るため、料理によっては「涼」に傾くのが特徴です。
白菜は、潤い不足に陥っている『陰虚』、気が集まり過ぎて熱症状が出る『陽盛』におすすめの食材です。
性味 | 平、甘味 |
帰経 | 胃、腸、肝、腎、膀胱 |
中医学的効能 | 利水、通便、清熱、酒毒解消 |
潤いが不足する『陰虚』体質とは
カラダに潤いをもたらす「陰」の気が不足し、体内の津液 (しんえき) も少ない状態の体質です。津液は、体内に存在する水分のことで血以外の体液の総称と考えるとわかりやすいです。具体的には汗や尿、唾液などが挙げられます。
陰の気は年齢を重ねるごとに減少するため、更年期症状が出る40歳以降によく見られます。更年期と聞くと、女性特有に思われがちですが、男性にも該当します。女性には閉経などの明確なカラダの変化が伴うため気づきやすいですが、男性は気づかないケースが多く、男性機能の低下に加え、女性同様にのばせ・多汗、全身倦怠感、頭痛、めまいなどの症状が出ます。
陰の気が不足すると血液がドロドロになりやすく、乾燥にも弱くなるため喉の不快感や咳症状も生じます。
カラダを冷やすトマトやナス、セロリなどの寒性食材や、緑茶などの苦味食材の摂り過ぎに注意しましょう。
陰虚体質の主な症状
□ 口が乾く
□ 冷たい食べ物・飲み物を好む
□ 不眠、寝汗をかきやすい
□ 肌がカサカサ
□ 夕方からの微熱
□ ほてりやすい
□ 耳鳴りがする
熱がこもりやすい『陽盛』体質とは
体内の陰陽バランスが崩れ、陽気が優勢になっている状態の体質です。
陽気は特に上半身に集まりやすく、ほてりをはじめ、口の渇き・目の充血・赤ら顔・のぼせなどの熱症状が特徴です。
また、情緒をコントロールする肝に症状が出やすく、怒りっぽくなったり、イライラ・興奮、それに伴って高血圧になりがちです。春先に傾向が強まるのも特徴のひとつです。
陽気を亢進させる唐辛子やネギ、生姜などの辛味食材や、にんにくやニラなどの温性食材は頻繁に摂らないようにしましょう。
陽盛体質の主な症状
□ 口が苦い
□ 片頭痛
□ 夢を見ることが多い
□ 喉の奥の不快感
□ お腹が張りやすい
□ 便秘と下痢を繰り返す
□ 目の奥が痛い
水分95%ながら健康効果は抜群!
白菜は95%が水分の食材です。特に水分補給が低下する寒い時期は、食材から得られる水分はとても重要になります。
水分不足になると血中の水分も減り、血液がドロドロになったり、それに伴ってカラダ全体が脱水症状になります。そのため消化吸収もスムーズにいかなくなり、食べているわりに栄養不足の状態に陥ります。
お肌や髪が乾燥する原因になるため、カラダを瑞々しく保つためにも積極的に採り入れたいですね。
白菜は100gあたり14kcalの低カロリーのうえ、糖質も少ないためダイエットに最適な食材です。
栄養価という点では落ちますが、美肌づくりに欠かせないビタミンCをはじめとしてビタミンK・葉酸・カリウムなどが含まれています。特にカリウムは必須ミネラルのひとつで、細胞の浸透圧維持、神経刺激の伝達、心臓機能や筋肉機能の調節など、ヒトが生きていくうえで重要な役割を担う成分です。ナトリウム排泄を促進する働きにより、血圧を下げる作用もあります。
また、ほかの野菜と比較して白菜にはセレンが多く含まれています。セレンには抗酸化・抗がん作用があり、インスリンの分泌を促すことで糖尿病にも効果があるといわれています。
加熱すると効果が減少してしまうため生食がおすすめですが、カラダを冷やす作用があるため冷え性体質の場合は大量に摂らないようにしましょう。
煮る場合には、栄養が溶け出した汁も含めて食べるようお鍋やスープにすると良いです。
ほかにも強い解毒作用のあるグルコシノレートが含まれています。発がん物質を無毒化する働きがあると聞けば、採り入れない手はないですね。加熱しても分解されないというのも魅力です。
白菜のかさ増し効果でカロリーの高いお肉などと合わせても、少量で満足感が得られるというのはダイエット中でも罪悪感なしで食べられますね。
カラダ潤すおうちで簡単薬膳レシピ
白菜の簡単ナムル風
生で食べる白菜はシャキシャキとした歯応えが楽しめるとともに、栄養価もそのまま摂りこめるのでおすすめです。3日ほど冷蔵庫で保存できるので常備菜としても◎。
材料:2人分
白菜 大玉1/8個
塩 小さじ1/4
ごま油 大さじ1
★ダシダ (顆粒鶏ガラスープの素でも可) 小さじ1
★酢 小さじ1
★醤油 小さじ1/2
★砂糖 小さじ1/2
★おろしにんにく 1片分
作り方:
① 白菜を1cm幅に切る。
② ビニール袋に①と塩を加え、袋の上から揉みこみ20分ほど常温で置く。
③ 20分経ったら出てきた水分を絞り出し捨てる。
④ ★を加えなじませたら、ごま油を加え揉みこんだらできあがり。
白菜と豚肉の無水ごま油鍋
潤い不足を補う白菜と豚肉の相乗効果を抜群に発揮する簡単無水鍋です。水を加えず調理するので栄養価も余すことなく摂れます。
材料:2人分
白菜 大玉1/8個
豚肉 300g
えのき 50g
★ごま油 大さじ2
★おろしにんにく 1片分
★顆粒鶏ガラスープの素 大さじ1
作り方:
① 白菜は3cm幅程度に切る。
② えのきは石づきを取り除き半分にカットしほぐしておく。
③ 豚肉は一口大に切り分け、★とよくなじませる。
④ 鍋に白菜の芯から半分ほど入れ、半量の豚肉、残りの①②、残りの豚肉の順に入れる。
⑤ 蓋をして弱火で30分蒸し煮し、火を止めて2分ほど蒸らしたらできあがり。
白菜と鶏肉のトロトロ煮
白菜は煮込むことで甘みが増し、トロトロに柔らかく煮ると胃腸にもやさしい一品になります。汁ごと食べると煮汁に溶け込んだ栄養を無駄なく摂取できます。
材料:2人分
白菜 1/4個
鶏肉 1枚
玉ねぎ 1/2
★コンソメ 2個
★水 200cc
牛乳 200cc
塩・こしょう 適宜
作り方:
① 白菜は3cm幅程度に切り、玉ねぎは薄切りにする。
② 鶏肉は一口大に切り分け、塩・こしょうをなじませておく。
③ 鍋に★と①②を入れ、蓋をして中弱火で30分ほどじっくり煮込む。
④ 最後に牛乳を加えて5分ひと煮立ちさせたらできあがり。